歯を失った時の治療法の一つがインプラントです。しかしインプラント治療に向いていない人もおられますので、ご説明します。
インプラント治療が向いていない人とは?
インプラントの治療を受けたいと思っていても、インプラント治療が向かない方もおられます。インプラント治療が向いていないのは、以下のようなタイプの方です。
- 歯の治療は保険治療のみで行いたい人
- 顎骨の量が少ない方
- 歯周病がある程度進んでいる方
- 骨粗しょう症の方
- 糖尿病などの全身疾患がある方
- 喫煙者の方
- 歯磨きが面倒くさくて嫌いな方
- 定期健診を受けたくない方
1.歯の治療は保険治療のみで行いたい人
保険で安い治療を受けられるのだから、わざわざ高い自費診療を受ける必要がないとお考えの方もおられます。保険診療と自費診療では、使える素材や治療方法が違っており、インプラントは保険外診療(自由診療)になります。
歯を失った時に保険診療で受けられる治療としては、入れ歯とブリッジがあります。
2.顎骨の量が少ない方
インプラント体は顎骨に埋め込まれますので、骨の高さや幅が足りないと、インプラントが歯茎を突き抜けてしまう等の不具合が起こります。
骨が足りない場合は、GRCやソケットリフトなどの増骨の処置を行うことでインプラント治療が可能になりますが、骨が出来るまでの期間がかかりますので、治療期間が延びることになりますます。
3.歯周病がある程度進んでいる方
インプラントがダメになってしまう理由のトップが、歯周病です。インプラントの周囲の歯周組織が歯周病になることを「インプラント周囲炎」と呼びます。
歯周病治療を先に行って、ある程度歯茎の状態が改善すればインプラント治療が可能になります。
4.骨粗しょう症の方
骨粗しょう症の方の場合、治療薬として「ビスホスホネート製剤」を服用している方は注意が必要です。
ビスホスホネート製剤は、骨の代謝を抑制して骨の破壊を抑えることができます。骨を破壊する働きを抑制すると、新しい骨の再生や歯周組織を作る役割も抑えてしまうため、細菌感染を起こしやすくなり、骨が治りにくくなって、最悪の場合、骨が壊死する可能性があります。
そのため、骨粗しょう症の治療薬として「ビスホスホネート製剤」を服用している方に対しては、インプラント治療が難しくなります。
5.糖尿病などの全身疾患がある方
糖尿病の方は、細菌に対する抵抗力が弱くなっており、傷が細菌への感染を起こしやすかったり、傷そのものが治りにくいという傾向があります。
また、血糖降下剤の内服やインスリンの自己注射をされている場合は、インプラント手術後に食事がしにくくなったタイミングでいつも通りの内服や注射を行うと、低血糖になってしまうことがあります。そのため、手術のタイミングと薬の内服や注射のタイミングについて、内科のかかりつけ医と事前に打ち合わせをしておく必要があります。
6.喫煙者の方
喫煙される方は、インプラント手術に置いて下記のような影響が出る可能性があります。
- インプラントが骨に定着しにくい
- 最近感染のリスクが高くなる
- 歯茎に炎症が起こりやすい
タバコからニコチンが体内に入ることで、インプラントが骨と結合しにくくなります。また、ニコチンは治療後の感染リスクを高める可能性があります。
タバコを吸うと唾液の分泌が減りますので、お口の中の自浄作用が働きにくくなり、インプラントの周囲の歯茎に炎症が起こりやすくなります。
7.歯磨きが面倒くさくて嫌いな方
インプラント治療が終わってからは、インプラントの周囲の歯茎を歯周病から守る必要があります。そのためには、インプラントの周囲に歯垢などの汚れが付着したままにならないように、丁寧に歯磨きを行わなければなりません。
普段から歯磨きが面倒くさくてサボりがちな方は、インプラントの周囲に炎症が起こり、インプラント周囲炎を起こすリスクが高まります。
毎日きちんと歯のケアを行うことは、インプラントを長くもたせるためにはとても大切なことです。
8.定期健診を受けたくない方
歯医者が嫌いで定期健診を受けたくない方がおられます。歯を失う理由は虫歯、歯周病によるものが大半ですが、これらはともに歯に付着した歯垢の中の細菌が原因で起こります。
毎日のセルフケアを丁寧におこなっていても、歯と歯の間や、歯周ポケット内の汚れや歯垢は、歯ブラシの毛先が届かず、磨き残しが起こりがちです。また、歯石が出来てしまうと、セルフケアでは除去することが出来ません。
インプラント治療後は、インプラントの周囲の歯茎に歯周病を起こさないようにするために、必ず定期健診(メンテナンス)を受けて頂く必要があります。当院では、定期健診を受けて頂くことが、インプラントの治療後の保証を受ける際の条件ともなっていますので、必ず定期健診を受けて頂くようお願いしております。
インプラント治療とは
インプラントは、虫歯や歯周病や事故などで歯を失った際の治療法の一つです。従来は入れ歯やブリッジで治療が行われていましたが、現在ではインプラント治療を受ける方が増えています。
インプラントの構造
インプラントは3つのパーツから成り立っています。
- インプラント体(人工歯根)
- アバットメント(支台)
- 上部構造(被せ物)
人工歯根を顎骨に埋め込んだ後、インプラント体が骨に固定されるまで数ヶ月待ちます。その後、インプラント体と上部構造を繋げるためのアバットメントを取り付け、型取りをして最終的な上部構造を作製します。
上部構造をアバットメントに装着して噛み合わせの調節をすれば、インプラント治療が終了します。
インプラント治療が向いていない人に関するQ&A
インプラント治療が向いていない人の特徴は以下の通りです。
1.歯の治療は保険治療のみで行いたい人
2.顎骨の量が少ない方
3.歯周病がある程度進んでいる方
4.骨粗しょう症の方
5.糖尿病などの全身疾患がある方
6.喫煙者の方
7.歯磨きが面倒くさくて嫌いな方
8.定期健診を受けたくない方
これらの特徴を持つ人々は、インプラント治療が適していない可能性があります。治療計画を立てる前に、歯科医師と十分な相談と評価を行うことが重要です。インプラント治療には様々な要因が影響するため、専門家のアドバイスを受けることが良い結果を得るために不可欠です。
歯周病が進行している場合でも、インプラント治療が可能になる条件は、まず歯周病治療を先に行って歯茎の状態を改善し、歯周組織の状態を整えることです。歯周病を治療してからインプラント治療を行うことで、治療の成功率を高めることができます。
骨粗しょう症の方は、治療薬として「ビスホスホネート製剤」を服用している場合に注意が必要です。ビスホスホネート製剤は骨の代謝を抑制するため、インプラントの骨結合や治癒が妨げられる可能性があります。そのため、インプラント治療が難しくなることがあります。
まとめ
インプラント治療に向いていない方の特徴についてご説明しました。これらの中には、患者さんご本人の努力で改善出来るものと、そうではないものがあります。インプラント治療をご希望の方は、一度歯科医院での初診カウンセリングをお受けいただき、検査や問診から、インプラント治療が可能かどうかを担当医にご確認ください。