インプラント治療を受けることになったら、手術の前日・当日・翌日の注意点に目を通して内容を把握しておきましょう。
必ずインプラント治療の前に担当医に伝えておくこと
歯科医師から質問があると思いますが、持病や服用中のお薬がある方は、必ず担当医に伝えましょう。アルコールやタバコに関しても、量によってはインプラントの治癒に関係してきますので、安全に治療を受けるために、必ず担当医に伝えましょう。
手術前に行うべき健康管理と口腔ケア
手術の成功には、口腔内の健康状態が非常に重要です。インプラントを支える骨や歯茎の状態が良好であることが、長期的な成功を左右します。したがって、手術前には以下の健康管理と口腔ケアを徹底しましょう。
- 歯磨きの徹底・・毎日の歯磨きを丁寧に行い、歯垢や汚れをしっかり取り除くことが大切です。特にインプラントを入れる予定の部位周辺の清掃は入念に行いましょう。
- 定期的な健診・・歯科医師による定期的な健診を受け、歯や歯茎の状態を確認してもらいます。歯周病や虫歯の有無をチェックし、問題があれば手術前に解決しておく必要があります。
- 口腔内の抗菌ケア・・手術前には、歯科医から処方される抗菌うがい薬を使用する場合があります。これは手術部位の細菌感染を防ぐために非常に重要です。
また、全身の健康状態も手術に影響を及ぼすため、糖尿病や高血圧などの持病がある場合、手術前にかかりつけ医との相談が必要です。薬の調整や、手術時のリスクについて事前に確認しておくことが重要です。
手術前の食事や薬の注意
手術の前日や当日は、食事や薬の管理も重要です。適切な準備が、手術の成功と安全に直結します。
手術前日の食事
前日はできるだけ消化の良い食事を摂るよう心掛けましょう。揚げ物や脂っこいものは避け、軽めの食事を心掛けます。また、アルコールの摂取は手術前日の夜は避けるべきです。アルコールは血液をサラサラにし、手術中の出血リスクを高める可能性があります。
手術当日の食事
手術当日は、担当医の指示に従って食事を取ることが重要です。一般的には、全身麻酔や鎮静麻酔を使用する場合、手術前6〜8時間は何も食べないことが推奨されます。一方、局所麻酔のみの場合は、軽食を摂っても問題ない場合もありますが、事前に歯科医師の指示を確認しておきましょう。
服用している薬の管理
現在服用している薬がある場合、手術前に歯科医師に必ず報告し、どの薬を継続し、どれを一時的に中止するべきかを確認しておきます。特に血液をサラサラにする薬(抗凝固薬)を服用している場合、出血リスクが高まるため、歯科医としっかり相談する必要があります。
タバコ、全身疾患についての注意
タバコは出来る限り控える
喫煙は出来るだけ控えましょう。できれば禁煙していただくのがベストです。タバコは一般的に健康被害があると言われますが、インプラント治療に関しては、タバコに含まれる有害物質のためにインプラントが骨と結合しにくい、傷が治りにくいなどの影響がありますので、一時的に喫煙して頂くことが好ましいです。
タバコの煙には三大有害物質と呼ばれるニコチン、タール、一酸化炭素の他にも70種類以上の発がん性物質が含まれています。
たばこの三大有害物質とは?
- ニコチン・・血管を補足して心拍数増加、血圧上昇をもたらす。強い依存性がありタバコをやめられなくなる。
- タール・・タバコのヤニの成分で発がん物質のかたまり。
- 一酸化炭素・・血液中で酸素を運ぶ機能を阻害し酸素不足を引き起こす。
タバコの煙に含まれるニコチンは毛細血管を収縮させて歯茎の血流を悪くし、免疫力を弱め傷が治りにくくなります。
全身疾患の症状のコントロール
全身疾患のある方は、日常的に服用している薬が手術に影響を及ぼす可能性があります。特に動脈硬化、糖尿病、骨粗しょう症などの持病がある方は、かかりつけ医師にきちんと相談した上でインプラント手術を受けるようにしましょう。。
抗血小板薬や抗凝固薬など血液をサラサラにする薬を服用されている場合は、出血が止まりにくくなるなどの問題が起こる可能性があります。
手術当日の食事、来院方法、服装、入浴の注意
当日にも注意点がいくつかあります。
食事について
手術の前には、担当医からの特別な指示がなければ、普段通りの食事を取って頂いても大丈夫です。食後の歯磨きなどのケアは丁寧に行うようにしましょう。
手術後はスープややわらかい食べ物を食べるようにして、傷口に食べ物が当たらないようにしましょう。食べ物が傷口に当たって傷が開くと、治りが遅くなったり感染のリスクが上がります。
車やバイクの運転
インプラント手術当日の車やバイクの運転に関する注意点は以下の通りです。
1. 運転は避ける
インプラント手術後は麻酔の影響で身体の感覚が鈍くなることがあります。このため、手術直後は運転能力に影響が出る可能性があるため、安全を考慮して車やバイクの運転は避けましょう。
2. 同伴者の確保
自宅などへ戻る際は、事前に家族や友人に送迎を依頼するか、公共交通機関を利用することを検討しましょう。※インプラントの埋入本数が少ない場合は、同伴者は必要ない場合が殆どです。
3. 麻酔の種類に注意
使用される麻酔の種類によっては、手術後数時間は車やバイクの運転に支障が出ることがあります。予め医師に麻酔の影響について確認し、指示に従いましょう。
4. 術後の痛みや不快感
手術後は痛みや不快感が残ることがあり、これが車やバイクの運転に影響を与える可能性があります。安全のため、痛みや不快感が完全になくなるまで運転は控えることをお勧めします。
5. 医師の指示に従う
医師から特別な指示がある場合はそれに従ってください。運転再開のタイミングについても、医師のアドバイスを参考にしましょう。
インプラント手術を受ける際は、安全第一で行動することが大切です。特に手術当日は体調が不安定になりやすいため、運転を控え、安全な移動方法を選択してください。
手術前の服装など
インプラント手術前の服装に関する注意点は以下の通りです
1. 快適で緩い服装
リラックスできるように、体にぴったりしすぎない服を選びましょう。特に、上半身は動きやすく、締め付けがないことが重要です。
2. 長袖シャツや長ズボンを着る
手術室は冷えることが多いので、温かく保てる服装が望ましいです。
3. 簡単に脱げる服を着る
手術後は体調がすぐに戻らないことがありますので、簡単に脱ぎ着できる服が良いでしょう。
4. ジュエリーやアクセサリーは避ける
手術中には金属製品を身につけることは避けましょう。耳飾り、指輪、ネックレスなどは外しておくことが望ましいです。
5. 化粧品や香水の使用を控える
化粧品や香水は、手術中にアレルギー反応などを起こす可能性があるため、控えるようにしましょう。
6. メガネや入れ歯などの取り外し可能なアイテム
必要に応じて取り外せるように、メガネや入れ歯などは手術前に外せる状態にしておくと良いです。
これらのポイントを踏まえ、当日はリラックスして臨める服装を選びましょう。また、不安な点があれば手術前に医師に相談することをお勧めします。
手術後のお風呂
血流が良くなると出血しやすくなったり、血が止まりにくくなりますので、当日はぬるめのお湯につかるか、シャワーにしましょう。
◇医院から出されたお薬は必ず服みましょう
当日は歯科医院から抗生物質などのお薬が処方されます。お薬を服むタイミングを守り、忘れないように全て服み切りましょう。薬疹などが出た場合は一旦服用をやめて歯科医院まで連絡しましょう。
まとめ
インプラント手術当日までに、体調を整えておきましょう。十分な睡眠をとって、リラックスした状態で手術日を迎えることが大切です。気持ちの余裕のある状態で受けられるようにしましょう。
インプラント手術前および当日の注意点に関して、以下の論文を参考に説明します。
1. Oh et al. (2016) の研究によると、インプラント手術は予測可能な方法であるものの、事故や合併症のリスクが増加しています。事故や合併症を最小限に抑えるためには、適切な術前評価が重要です。特に、皮質骨が初期安定性を提供するのに不十分な場合、インプラントフィクスチャーは設置中に上顎洞や骨髄空間に移動する可能性があります。このため、インプラント設置時には、骨質の評価や必要な診断イメージングを行い、潜在的なリスクを事前に把握することが重要です。【Oh, Kim, & You, 2016】
2. Ebenezer, Ramalingam, & Nair (2021) の研究では、インプラント手術に際して予防的抗生物質の処方に関する問題が取り上げられています。一般的にアモキシシリンやペニシリンが最初の治療として処方されますが、ペニシリンアレルギーの増加に伴い、クリンダマイシンが代替薬として優れた結果を示しています。しかし、抗生物質の使用は論争の対象であり、特に手術後の標準的なガイドラインが必要です。抗生物質の使用による否定的な影響をコストと疾病の発生率と比較して評価する必要があります。【Ebenezer, Ramalingam, & Nair, 2021】
これらの論文から、インプラント手術における重要な注意点として、適切な術前評価と潜在的な合併症への対策、そして予防的抗生物質の使用に関する慎重な判断が挙げられます。患者の健康状態や骨質を評価し、必要に応じて適切な抗生物質を処方することが重要です。