唾液はお口の中を唾で潤すこと以外にも、お口や体に様々な役割をもっていますので、ご紹介します。
唾液の基本的な役割とは?
唾液は、口腔内で非常に重要な役割を果たしており、食事や日常の会話の中で口腔の健康を維持するために多様な機能を担っています。主に、唾液は主に以下のような役割を持っています。
- 口内を湿らせ、乾燥を防ぐ
- 食べ物を飲み込みやすくする
- 味を感じるために必要な溶解作用を担う
- 歯の表面を保護し、摩擦を軽減する
これらの基本的な機能により、唾液がなければ私たちの生活は大きく不便なものとなってお口の中の健康にも大きな影響を及ぼします。これらの役割に加え、唾液がどのようにして口腔内の健康を維持し、病気から守る働きをしているのか、具体的に見ていきましょう。
口腔内の浄化機能
唾液は、口腔内の浄化機能において非常に重要な役割を果たしています。食事や飲み物を口に入れると、口内には食べ物のカスや糖分が残ります。これが原因で細菌が増殖し、虫歯や歯周病の原因となる歯垢が形成されます。
唾液は、その中に含まれる水分や酵素によって、これらの食べ物の残りカスを洗い流す機能を持っています。唾液の浄化機能によって、以下のようなことが期待できます。
- 歯垢の形成を抑制する
- 食後の口内を清潔に保つ
- 口臭の原因となる物質を減少させる
特に食後に唾液が十分に分泌されることで、歯磨きの補助的な役割を果たし、虫歯や歯周病の予防に寄与しています。
抗菌・抗ウイルス作用
唾液には抗菌・抗ウイルス作用があり、これが口腔内の健康を守るために非常に重要です。唾液中には、リゾチームやラクトフェリンといった抗菌物質が含まれており、これらは細菌の増殖を抑える働きをします。また、ウイルスに対する防御も行い、病気のリスクを減らします。
具体的な唾液の抗菌・抗ウイルス作用としては以下の点が挙げられます。
- 細菌の細胞壁を破壊し、繁殖を抑制
- ウイルスに対する防御バリアを形成
- 口腔内の感染症リスクを低減
このような唾液の働きにより、口腔内だけでなく、全身の健康も守られています。口内の衛生状態が悪化すると、全身に影響が及ぶことがあるため、唾液の抗菌作用は特に重要です。
唾液の緩衝作用と歯の再石灰化
食事や飲み物の摂取により、口腔内のpH値が酸性に傾くことがあります。この酸性環境は、歯の表面を侵食し、エナメル質の脱灰を引き起こします。これが進行すると虫歯になりやすくなるのです。
唾液は緩衝作用を持ち、口内のpHを中性に戻す手助けをします。その結果、以下のような効果があります。
- 酸性環境を中和し、歯の侵食を防ぐ
- エナメル質の再石灰化を促進し、歯を強化
特にカルシウムやリンといった再石灰化を促進する成分が唾液中に含まれており、これがエナメル質の修復を助けます。唾液が十分に分泌されることで、日常的な酸によるダメージから歯を守ることができます。
唾液と消化の関係
唾液は単に口内の健康を保つだけでなく、消化の最初の段階でも大きな役割を果たしています。唾液には、アミラーゼという消化酵素が含まれており、この酵素が炭水化物を分解し始めます。食べ物を口に入れた瞬間から、唾液による消化がスタートし、胃や腸での消化を助ける役割を担っています。
唾液による消化の主な役割は以下の通りです。
- 食べ物を湿らせて飲み込みやすくする
- アミラーゼによりデンプンを分解し、消化の準備をする
- 味覚を補助し、食事をより楽しむことができる
このように、唾液は消化の初期段階で非常に重要な役割を果たしており、食事をより効率的に消化するためには不可欠な存在です。
唾液には、下記の成分が含まれています。
- アミラーゼ・・でんぷんを糖に変え、体内への吸収を促進する
- リゾチーム・ペルオキシダーゼ・ラクトフェリン・・細菌やウィルスから防御する
- ムチン・・食べ物を包むなど粘膜を保護し、感染症にかからないように保護する
- EGF・・粘膜などの組織が傷つくと修復する
- 重炭酸塩・リン酸塩・・歯垢(プラーク)の中の細菌が作った酸を中和する
その他の唾液の働き
1. 口腔内のpHバランスの維持
緩衝作用により、食事の後に酸性に傾いた口腔内のpHを中性に近づけることで、酸によって歯のエナメル質が溶けるのを防ぎます。
2. 味覚の認識
唾液は食べ物の味を感じるために不可欠です。食べ物の中の味覚物質を溶かし、味蕾への物質の伝達を助けることで、食べ物の味を感じることを可能にします。
3. 話しやすさの促進
唾液は口腔内や咽頭部を潤滑に保ち、話す際や食べ物を飲み込む際に、滑らかに動くようにサポートします。
これらの機能により、唾液は消化システムの重要な一部であり、口腔の健康を維持するために欠かせない役割を果たしています。
唾液の分泌量が低下すると健康リスクにつながる
唾液の分泌量が低下すると、口腔内の健康だけでなく、全身の健康にも影響を及ぼします。加齢や病気、薬の副作用などで唾液の分泌が減少することがありますが、この状態は「ドライマウス」や「口腔乾燥症」と呼ばれます。
唾液の分泌量が減ることによって、以下のようなリスクが高まります。
- 虫歯や歯周病のリスクが増加
- 口臭が強くなる
- 味覚障害が発生し、食事の楽しみが減少
- 口内炎や粘膜の炎症が起こりやすくなる
特に高齢者や持病を持つ患者さんの場合、唾液分泌量の低下は深刻な健康問題を引き起こすことがあります。適切な水分補給や唾液の分泌を促すガムの使用などが推奨されます。また、歯科医師による定期的な健診を受け、口腔内の健康状態をチェックすることも大切です。
唾液腺について
唾液は耳下腺(耳の前から下)、顎下腺(左右のあごの下)、舌下腺(正面のあごの下)から主に分泌され、一日あたり1リットル~1.5リットル程度分泌されます。意外と多いと思われる方も多いでしょうが、お口の中を潤すためには一日にそれくらいの量が必要となります。
唾液は交感神経と副交感神経でコントロールされる
唾液の成分はほとんどが水分ですが、ネバネバしている場合はドライマウスを起こしている可能性もあり、なるべくストレスや疲れのない規則正しい生活を心がけることをおすすめします。就寝時には唾液の分泌量が極端に減るため、夜寝る前に丁寧な歯磨きをしておかないと、口腔内で細菌の感染が広がってしまいます。唾液をコントロールしているのは、交感神経と副交感神経です。
- ストレスを感じている時は交感神経が働き、ねばねばした唾液が舌下腺より分泌
- ストレスを感じていない時は副交感神経が働き、さらさらした唾液が耳下腺より分泌
パーキンソン病やうつ病、花粉症などの薬を服用されている方、服用されている薬や体の状態によって、唾液が分泌されにくくなっているケースがあります。
まとめ
健康な体を維持するために唾液は欠かせない役割があるとお分かりいただけたと思います。口臭がひどくなった等のお悩みがあれば、ドライマウスか、もしくは重度のむし歯で膿が出ているという可能性もあります。しっかり歯医者さんへ行って、状態を確認してもらいましょう。