詰め物・被せ物は虫歯を削った後に削った部分を埋めて修復するための処置です。詰め物や被せ物が外れてしまった時にはどうすれば良いのかご説明します。
詰め物・被せ物はなぜ取れてしまうの?
詰め物・被せ物の種類は、レジン、金属、セラミックなどがあります。保険診療の虫歯治療には、コンポジットレジンか銀合金が使用され、セラミック素材は自費診療になります。
せっかく治療したのに取れてしまっては意味がないと思われるかもしれませんが、毎日使うお口の中で、人工的に作られたもので歯を保護しているため、経年劣化はどうしても避けられません。自然の歯でさえ、年齢とともに歯周組織が細菌に感染しやすくなったり、疲労やストレスで弱ってしまったりして衰えてしまうのですから、詰め物・被せ物は永久保証されるものではありません。
多くの場合、詰め物・被せ物がとれる原因は劣化によります。ただしそれ以外の理由も存在するため、もし詰め物・被せ物がとれてしまった時の原因や困った時の対処法について、よく確認しておきましょう。
1.接着剤や材質の劣化
詰め物・被せ物そのものの劣化もありますが、詰め物・被せ物と歯を接着している接着剤の寿命がもっとも多い原因です。
また、詰め物・被せ物の劣化に関しては、時間が経過するにつれて材質が徐々に劣化し、微細な亀裂が生じたり、緩んだりすることがあります。これは自然な過程であり、金属やセラミックなどのどの材質も長期間の使用により劣化は避けられません。
接着剤の劣化への対策
治療後は定期的に歯科医院のメンテナンスをうけて、詰め物・被せ物がそろそろ寿命だとわかれば、早めに新しいものに付け替えることで、細菌の侵入などを防ぐことができます。
詰め物・被せ物の材質の劣化への対策
詰め物・被せ物の材質が劣化した場合は、新しい詰め物・被せ物を作製して接着する必要があります。その場合、古い詰め物・被せ物を外した後に歯を少し削る必要があります。
2.虫歯の再発(二次カリエス・二次虫歯)
経年劣化によって詰め物・被せ物がとれてしまった時、二次カリエス(二次虫歯)と呼ばれる治療後の虫歯の再発が起こっている可能性があります。二次カリエスは、詰め物・被せ物、特に銀歯と歯のすき間から虫歯になり、虫歯の進行に伴ってすき間が大きくなり、やがて詰め物などがとれてしまいます。
二次カリエスの予防
虫歯治療後の歯は、通常の歯よりも念入りに歯磨きしてください。歯と詰め物の境目には段差があるため、歯垢や汚れがつきやすくなります。常に新しい虫歯ができないようなお口の環境を維持できるようにしましょう。
3.歯ぎしり・食いしばり
歯ぎしりや食いしばりなどで、歯に大きな負荷が長くかかると、詰め物や被せ物は外れたり割れたりしやすくなります。
詰め物や被せ物は、正常な咀嚼力に耐えられるように設計されていますが、歯ぎしりや食いしばりによって異常な力が加わると問題が生じることがあります。例えば、硬い食べ物を噛む、歯ぎしりをする、爪を噛むといった習慣が原因で、予期しない圧力が詰め物や被せ物に加わり、それが取れたり破損したりする原因となることがあります。
歯ぎしりの予防
歯ぎしりは意識的にやめられればいいのですが、寝ている間などは無意識ですので、マウスピースを着用するなどの工夫をして、歯に過度な負担がかからないように気をつけましょう。
4.噛み合わせ
詰め物・被せ物はもちろん治療後にはしっかり装着できているのですが、月日が経つにつれて摩耗や酸化をくり返して、噛み合わせが変わっていくと外れやすくなります。
噛み合わせの変化に対する対処
経年劣化と大差はないのですが、治療後は定期的に歯科医院のメンテナンスをうけて、そろそろ寿命だとわかれば、早めに付け替えるとよいでしょう。
5.歯が割れたため
土台の歯が何らかの理由で割れると、詰め物・被せ物がとれてしまうことがあります。
歯が割れた場合の対処
歯が割れた原因が虫歯だとしたら、二次カリエスの可能性が高いため、早めの治療が最善です。事故などが原因でも、すぐに新しい詰め物・被せ物を作る必要があるため、決して放置はしないでください。
6. 突然の事故や衝撃
物理的な外傷も詰め物や被せ物が取れる大きな原因となります。スポーツ中の事故、転倒、直接的な衝撃などが原因で、突然詰め物や被せ物が取れることがあります。また、交通事故でけがをした際にも、口の中の外傷によって歯が折れたり、詰め物・被せ物の作り直しが必要になる場合があります。このような状況は予測が難しく、時には健康な歯ですらダメージを受けることがあります。
詰め物・被せ物がとれた場合の応急処置と注意事項
1.早めに歯科医院を受診しましょう
本来あった詰め物・被せ物がなくなり、治療痕が露出した歯は非常に脆弱な状態です。詰め物や被せ物が取れたまま放置すると、虫歯や歯茎のトラブルが悪化する恐れがあります。できるだけ早く歯科医を受診し、適切な治療を受けるようにしましょう。
2.自分で元の位置にはめ戻さないでください
すぐになら自分でつけ直せるのではと思われるかもしれませんが、破損の恐れがあるため絶対におやめください。また、無理にはめ込もうとして、土台の歯が割れてしまう恐れもあります。市販の接着剤を使用するなども決してなさらないでください。
3.食後は必ず歯磨きをしてください
もともとあった詰め物・被せ物がなくなり、くぼんだ患部には食片や歯垢が溜まりやすくなります。露出した治療痕を傷つけないように、丁寧に歯磨きをして、歯科医師に診てもらうまでは特に清潔に保ってください。
4.治療痕が露出した歯で噛まないでください
詰め物・被せ物がなくなった歯は、他の歯に比べると極端に弱くなります。普段の顎の力でその歯を噛んでしまったら、歯が割れる恐れがあります。また、詰め物・被せ物がなくなったことで歯の神経が近くなり、冷たい物・熱い物などいろいろな刺激で痛みを感じやすくなります。
5.とれた詰め物・被せ物は歯科医院にご持参ください
取れた詰め物や被せ物を捨てず、清潔に保管してください。再装着が可能な場合があるため、歯科医に持参することをおすすめします。ティッシュ・ハンカチに包むと、変形の恐れがあるため、できれば小さなタッパーウェアなどのケースに入れてお持ちください。
詰め物や被せ物が取れるのを防ぐための予防策
詰め物や被せ物が取れるのを防ぐためには、毎日のデンタルケアが非常に重要です。
1. 定期的な健診
詰め物や被せ物の状態を定期的に確認してもらうため、歯科医院での健診を怠らないようにしましょう。健診では、歯垢の除去や接着剤の劣化をチェックできます。
2. 正しい方法で歯磨きをする
毎日の歯磨きは、詰め物や被せ物の周囲の清潔を保つために欠かせません。特に歯垢がたまりやすい部分を丁寧にケアすることが大切です。
3. 噛み合わせの調整
不正咬合がある場合、噛み合わせの調整を行うことで詰め物や被せ物にかかる負担を軽減できます。歯科医に相談して、適切な治療を受けることが予防につながります。
詰め物や被せ物が取れた後の再治療の流れ
詰め物や被せ物が取れた後の再治療は、状況に応じて異なりますが、一般的な流れをご説明します。
1. 状態の確認
まず、歯科医が取れた部分を確認し、詰め物や被せ物が再利用できるかを判断します。新たな虫歯がある場合、まずその治療が優先されます。
2. 再装着または新規の詰め物・被せ物の作製
詰め物や被せ物が再装着できる場合は、その場で修復が行われます。ただし、劣化や破損が見られる場合は、新たに作製する必要がある場合もあります。
3. 最終確認と調整
治療が完了したら、噛み合わせの確認と最終調整が行われます。ここでしっかりとフィットするように調整されるため、長期間にわたって問題なく使用できる状態に整えられます。
まとめ
詰め物・被せ物が取れる原因と対処法についてご説明しました。取れてしまった原因は歯科医院でしかわかりませんし、対処できるのも歯科医師だけですので、出来るだけ早く受診するようにしましょう。