矯正治療中に装置を歯に装着している間は、虫歯のリスクが高まることがあります。矯正治療中に虫歯が発生した場合、適切なケアと早い対応が必要です。矯正治療中の虫歯リスクをどのように管理し、適切な対処をするかについてご説明します。
矯正治療と虫歯のリスク
矯正治療を受けている多くの患者さんが直面する問題の一つに、虫歯のリスクがあります。ワイヤー矯正、裏側矯正では、ブラケットとワイヤーという装置を歯につけますが、複雑な形をしているため、食べ物のカスや歯垢がたまりやすくないrます。
特に、ブラケットの周囲やワイヤーの下は、普段の歯磨きだけでは磨き残しが出やすく、磨き残しがついたまま時間が経過して歯垢になることで虫歯の直接的な原因となります。
マウスピース矯正は歯の面を覆ってしまうため、虫歯になりやすい環境を作り出してしまいます。マウスピース矯正の場合は特に虫歯のリスクが高くなりますので、注意が必要です。
虫歯になりやすい矯正装置
歯列矯正中に虫歯が起こりやすくなることはよくある問題です。矯正装置の種類によって虫歯になりやすい理由が違いますので、ご説明します。
1. ワイヤー矯正
ワイヤー矯正は歯の表側にブラケットと呼ばれる小さな装置を張り付け、ブラケットにワイヤーを通してワイヤーを絞って力をかけ、歯を動かしていきます。
ブラケットは小さくて複雑な形をしているため、食べ物のカスや歯垢がたまりやすく、ワイヤーを通している部分にも食べ物が引っかかりやすいため、歯磨きにコツが要ります。
当院のワイヤー矯正は主にセラミック製のブラケットを使用しますので、ブラケット自体には汚れがつきにくいという利点があります。
2. 裏側矯正
裏側矯正は歯の裏側にブラケットと呼ばれる小さな装置を張り付け、ブラケットにワイヤーを通してワイヤーを絞って力をかけ、歯を動かしていきます。
裏側矯正は歯磨きの時に装置が見えませんので、デンタルミラーを使用して様々な角度から装置の状態を見ながら歯磨きすることが必要です。歯磨きの難易度はワイヤー矯正よりも高くなります。
3. マウスピース矯正
マウスピース矯正は透明なマウスピースを歯に装着し、食事と歯磨きの際には外して行います。いつも通りに歯磨きが出来るので、虫歯はできにくいと思われるかもしれませんが、マウスピースをはめた歯には唾液が届かないため、乾燥しやすく、虫歯が出来やすい状態になります。
意外だと思われるかもしれませんが、マウスピース矯正は虫歯になるリスクが高いため、特に虫歯予防に注意が必要です。
虫歯を防ぐための日常ケア
矯正治療中の虫歯予防には、正しい方法での歯磨きが重要です。
- 矯正治療中の歯磨きは1日3回、出来るだけ毎食後に行う
- 使用する歯ブラシは、柔らかめのものを選ぶ
- ブラケットやワイヤーの周りも丁寧に磨く
- フロスや歯間ブラシも使って、歯と歯の間や装置の隙間の清掃を行う
- フッ素入りの歯磨き粉や、抗菌作用を持つ口内洗浄剤の使用も、虫歯予防に効果的
- 定期的に歯科医院でクリーニング(定期健診)を受ける
矯正治療中は虫歯のリスクが高まるため、適切な口内ケアを行うことが大切です。
矯正治療中に虫歯が見つかったら?
矯正治療中に虫歯が発見された場合、速やかに対応しなければなりません。適切な治療方法を選択することで、虫歯の進行を抑え、矯正治療を継続することが出来ます。以下に、矯正治療中に発見された虫歯の対処法についてご説明します。
1. 早期発見と評価
矯正治療中は、定期的に来院していただき、調整やチェックが行われます。その際に虫歯を早期に発見することが可能です。虫歯が見つかった場合、歯科医師は虫歯の深さや位置によって、最適な治療計画を立てます。早期発見された虫歯は小さな処置で済むことが多いです。
矯正治療中の来院頻度は、ワイヤー矯正、裏側矯正の場合は一ヶ月に1回。マウスピース矯正の場合は2ヶ月に1回程度となります。
2. 矯正装置の調整
虫歯の治療を行う場合、矯正装置が邪魔になることがあります。必要に応じて、歯科医師はブラケットやワイヤーを一時的に外し、虫歯の治療がしやすい状態を作り出します。治療後、再度装置を適切な位置に戻し、矯正治療を継続します。
3. 虫歯の治療
虫歯の程度に応じて、以下のような治療が行われます:
初期虫歯
ごく初期段階の虫歯でまだ穴があいていない場合は、フッ素塗布によって石灰化を促し、初期の段階で虫歯を食い止めます。
軽度の虫歯
歯の表面のエナメル質がさらに溶けて、黒ずんでいる状態になると、虫歯に冒された部分を削ってレジン(歯科用プラスチック)を詰めて治療します。
象牙質の虫歯
象牙質まで達した虫歯の場合、虫歯を削って詰め物をする治療が必要です。レジンや銀歯などの材料で治療を行います。
神経まで達した虫歯
矯正治療中に神経まで達した虫歯になることは殆どありませんが、もし重度の虫歯になってしまったら、矯正治療を一旦中断して、場合によっては神経を取る治療を行って被せ物をかぶせて治療します。神経の治療には数回の来院が必要になります。
虫歯治療後に矯正治療は継続出来るの?
1. ワイヤー矯正、裏側矯正で虫歯に治療のために装置を外さなかった場合
虫歯治療後、矯正治療は通常通り継続されます。矯正治療中の虫歯治療は、矯正治療の進行状況に影響を与えないように慎重に行われます。矯正装置が再配置された後、治療計画に基づいて治療が再開されます。
2. ワイヤー矯正、裏側矯正で虫歯治療のために一旦装置を外した場合
元通り歯に装置を付け、矯正治療を再開します。
3. マウスピース矯正の場合
虫歯治療によってマウスピースが合わなくなる場合があります。その場合はマウスピースを作り直すことになりますので、担当医の指示に従いましょう。
虫歯治療後もマウスピースがきちんとはまる場合は、そのまま治療を継続します。
予防対策の強化
虫歯治療後、再発防止のために虫歯予防のための対策を強化しましょう。正しい方法での歯磨きは必須となります。歯と歯の間の汚れを落とすにはデンタルフロスも使用しましょう。
また、抗菌マウスウォッシュの利用も効果があります。歯に汚れがつきにくい食事内容にすることも虫歯予防に役立ちます。
矯正治療中の虫歯には早期発見と早期対応が必要です。定期的な歯科健診と毎日の適切な口内ケアにより、矯正期間中の虫歯リスクを最小限に抑えるようにしましょう。
矯正治療中の虫歯に関するQ&A
矯正治療中に虫歯のリスクが高まる理由は、矯正装置が食べ物のカスや歯垢をためやすくし、普段の歯磨きでは磨き残しが出やすいからです。特にワイヤー矯正や裏側矯正では、ブラケットやワイヤーの周りに汚れがたまりやすく、虫歯の原因となります。マウスピース矯正でも、マウスピースが唾液の流れを妨げるため、歯が乾燥しやすく、虫歯のリスクが高まります。
矯正治療中に虫歯が見つかった場合、速やかに対応する必要があります。虫歯が見つかったら、歯科医師は虫歯の深さや位置を評価し、適切な治療計画を立てます。必要に応じてブラケットやワイヤーを一時的に外し、虫歯の治療を行い、その後装置を再配置します。虫歯の程度によっては、フッ素塗布、レジン充填、銀歯の詰め物などの治療が行われます。
虫歯治療後も通常、矯正治療を継続できます。ワイヤー矯正や裏側矯正の場合、虫歯治療のために一時的に装置を外した後、治療が終わったら再び装置を付け直して矯正治療を続けます。マウスピース矯正の場合、虫歯治療後にマウスピースが合わなくなることがありますが、その際は新しいマウスピースを作成し、治療を継続します。虫歯治療によって治療計画が大きく変わることは少ないです。
まとめ
矯正治療中の虫歯は、適切な予防とケアによって大幅にリスクを減らすことができます。定期的に歯科でクリーニングを受け、正しい方法で歯磨き技術の習得、適切な口内ケア用品の使用が、虫歯予防に繋がります。