歯を失った場合には顎の骨が痩せるという現象が見られ、見た目の変化だけでなく、インプラント治療などの歯科治療にも影響を与えます。顎の骨が痩せる理由やそのメカニズム、そして痩せた顎骨に対するインプラント治療についてご説明します。
顎の骨が痩せるとは?
顎の骨が痩せるとは、顎の骨の体積や密度が減少し、全体的な骨量が減少することをいいます。特に歯を失った後は、この現象が起こることがあります。歯が抜けた部分の骨は、通常、噛むことによる刺激がなくなるため、少しずつ骨が再吸収されてなくなっていきます。顎の骨が痩せることは、見た目の要望の変化だけでなく、インプラントや入れ歯の安定性にも大きな影響を与えます。
顎の骨が痩せる主な原因
顎の骨が痩せる原因はさまざまですが、主に以下の要因があげられます。
歯の喪失
歯が失われると、噛むことで刺激されていた部分の顎骨が、噛む刺激が伝わらなくなるために次第に失われていきます。歯根が存在しないため、骨が再吸収され、結果として顎の骨が痩せてしまいます。
歯周病
歯垢や歯石が歯周ポケットにたまり、歯茎や骨を破壊していくことで、歯を支える骨が減少します。重度の歯周病は、顎の骨の密度を大きく損なう原因のひとつです。
加齢
年齢を重ねると、骨の新陳代謝が遅くなり、顎の骨も痩せやすくなります。特に適切な口腔ケアが不足している場合、顎の骨が加速度的に減少することがあります。
全身的な健康状態
骨粗しょう症などの骨密度が低下する病気が顎の骨にも影響を与え、骨が痩せる原因になります。カルシウムやビタミンDの不足もまた、顎の骨の健康に悪影響を与えます。骨粗しょう症は女性に多い病気なので、女性の方は注意が必要です。
インプラント治療に必要な顎の骨量
インプラント治療では、チタン製の人工歯根を顎骨に埋め込むため、十分な骨量が必要です。顎の骨が痩せている場合、インプラントの固定が難しく、安定性に欠けるため、治療が困難になることがあります。
インプラントを成功させるために必要なこと
- 十分な骨量
- 健康な歯茎
- 適切な歯磨き習慣
顎の骨が痩せると、インプラントを支える力が弱くなるため、治療の前に骨を増やす処置が必要となる場合があります。
顎の骨が痩せている場合のインプラント治療の選択肢
顎の骨が痩せていても、インプラント治療が不可能というわけではありません。いくつかの方法で骨の量を増やし、治療を行うことができます。
骨が薄い場合
GBR
顎の骨が足りない部分に「メンブレン」という特殊な膜を入れ、骨補填剤を用いて骨を作ります。
骨が足りない場合の治療
サイナスリフト
歯ぐきをめくって穴を空け、上顎洞に向けて切開した穴から骨補填剤を入れます。骨ができるまでには半年程度かかり、その後インプラント治療を行います。この骨造成は大がかりな方法となり、傷も大きく、大きな腫れを伴います。
ソケットリフト
インプラントを入れる穴から骨補填材を入れて、上顎洞を持ち上げるように骨をつくります。歯ぐきを大きく切開する必要がないため、大きく腫れることはありません。
骨移植
自身の骨を移植することで、顎の骨量を増やすことができます。一般的に、移植骨は顎の他の部分や股関節から採取されます。
顎の骨を守るために日常でできるケア方法
顎の骨が痩せるのを防ぐためには、まず歯を失わないことです。そのためには毎日のセルフケアが大切です。以下の方法で顎の骨を守りましょう。
定期的な健診
口腔内の状態を定期的に確認し、歯周病やその他の問題が発生していないかをチェックすることが大切です。
正しい歯磨き習慣
歯垢をしっかりと取り除くために、正しい歯磨き方法を実践することが、歯や顎の健康維持に欠かせません。特に歯周病の予防が、顎の骨の保護につながります。
カルシウムやビタミンDの摂取
骨の健康を保つために、カルシウムやビタミンDを適切に摂取することが重要です。これらの栄養素は、顎の骨の強化に役立ちます。
噛む力を意識する
食事の際、しっかりと噛むことで顎の骨に刺激を与え、骨の健康を保つことができます。柔らかい食事ばかりではなく、適度に噛み応えのある食品も取り入れることが効果的です。
まとめ
歯を失うことや歯周病、加齢などが原因で顎の骨が痩せてしまうことがありますが、適切なケアと治療を行うことで進行を遅らせたり防いだりすることが可能です。
患者さんがインプラント治療を希望される場合は、十分な骨量が必要です。骨が足りない場合は骨移植や人工骨材を使った方法で対応できることもあります。