インプラント治療は天然歯に近い見た目と機能を取り戻すことができ、しっかりと噛めるため、日常生活の質を向上させる効果があります。しかし、インプラントにも寿命があり、長く使い続けるためには適切なケアが欠かせません。インプラントの平均的な寿命、寿命を左右する要因、そして寿命を延ばすためのケア方法や生活習慣についてご説明します。
インプラントの寿命とは?
インプラントは「第二の永久歯」とも言われるほど、しっかりと機能する治療法です。しかし、その寿命には限りがあり、平均的には10年から20年程度とされています。一般的には天然歯と同様に、適切なケアをすることで長期間使用できるもので、患者さんのケア次第でその寿命を延ばすことも可能です。
インプラントの寿命に影響すること
インプラントの寿命は一概に決まっているものではなく、さまざまな要因が絡み合って決まります。
1. 歯磨きがきちんと出来ているか
口腔ケアが不十分だと、インプラントの周囲に歯垢が溜まりやすくなり、インプラント周囲炎を引き起こすリスクが高まります。これはインプラントを支える骨に炎症が生じ、グラグラし始め、最悪の場合抜けてしまう原因になります。
インプラントは天然歯とは異なり、感染しやすい特徴があります。感染を予防するためには、毎日の歯磨きだけでなく、歯間ブラシやデンタルフロスを使った細部のケアも重要です。
2. 生活習慣
生活習慣はインプラントの寿命に大きな影響を及ぼします。特に以下の要素が注目されます。
喫煙
タバコに含まれる有害物質が口腔内の血流を悪化させ、インプラント周囲の組織を弱らせます。喫煙者は非喫煙者に比べてインプラント周囲炎の発症リスクが高く、寿命が短くなる傾向があります。
ストレス
ストレスによる免疫力低下もインプラントの寿命に影響を与えます。免疫力が低下すると感染リスクが高まり、インプラント周囲炎のリスクが増加します。
食生活
硬いものを頻繁に噛んだり、酸性の食品や糖分を多く摂取したりすることは、インプラントの周囲組織にダメージを与えやすくなります。
3. 定期健診を受診しているかどうか
インプラントの健康を保つためには、定期的な健診が重要です。インプラント周囲炎やその他のトラブルは、早期に発見して対処することで被害を最小限に抑えられます。一般的には、3~6ヶ月に1回の健診が推奨されています。健診の際には、専門的なクリーニングも行われ、普段のケアで取り切れない歯垢やバイオフィルムや歯石を除去することができます。
4. 位置と噛み合わせ
インプラントの設置位置や噛み合わせも寿命に影響を与えます。特に、不正咬合などで過度な力がインプラントに加わると、負担がかかりやすくなり、寿命が短くなるリスクがあります。また、奥歯に入れたインプラントは前歯よりも噛む力が大きいため、摩耗や破損のリスクも高くなります。
5. 材質と品質
インプラント自体の材質や品質も寿命に関係しています。一般的にはチタンが使用されますが、チタンの品質やインプラントシステムの設計、形状によっても長期的な安定性が変わります。信頼性の高いメーカーのインプラントシステムを使用することが重要です。また、インプラントの上部構造に使用される被せ物の素材も、寿命に影響を与えます。
6. 患者さんの全身の健康状態
全身の健康状態もインプラントの維持に関係しています。特に糖尿病や骨粗鬆症など、骨や免疫に関わる疾患を持つ方は、インプラントの安定性が低下しやすいとされています。また、加齢による骨密度の低下も寿命に影響を与えるため、健康状態に合わせたケアが求められます。
これらの要因を考慮し、日常のケアや生活習慣の改善、定期的な健診の受診を心がけることで、インプラントの寿命をできる限り長く保つことができます。
万が一ダメになった時はどうしたらいい?
インプラントは耐久性が高く、適切なケアをすれば長期間使用できますが、何らかの理由でグラグラになったり抜けてしまうことがあります。その場合は早急な対応が必要です。
1. まずは歯科医に相談する
異常を感じたら、まず歯科医に相談することが重要です。違和感や痛み、ぐらつきなどがある場合、早期に対処することで症状の悪化を防げることがあります。
早期診断の重要性
インプラント周囲炎や骨吸収が原因であれば、初期段階での治療が効果的です。放置すると症状が進行し、インプラントがダメになる恐れがあるため、早めの診察が欠かせません。
2. インプラント周囲炎の治療
インプラント周囲炎が原因でインプラントが不安定になっている場合、周囲炎の治療を行います。炎症が治まれば、そのまま維持できるケースもあります。
- クリーニングと消毒・・専用の器械によって徹底的な清掃を行うことで、炎症の軽減が期待できます。
- 骨を増やす処置・・インプラント周囲の骨が減っている場合、骨移植や再生療法を行い、骨の量を増やす治療が行われることもあります。
3. インプラントの再治療
もしインプラントがダメになった場合、再度埋入することもあります。ただし、骨が十分でない場合や健康状態によっては、すぐに再手術ができないこともあります。
- 再度のインプラント手術・・一度撤去した部分の骨や歯茎が治癒してから、再度埋入手術をすることが可能です。治癒期間は通常数ヶ月かかりますが、健康な骨回復すれば再治療の成功率も高くなります。
- 増骨の処置・・骨の量が不足している場合、骨移植や再生療法で骨を増やし、再度埋入手術を行うことが出来ます。
4. 他の補綴方法の検討
再手術が難しい場合や健康上の理由で手術が困難な場合、他の補綴方法(入れ歯やブリッジなど)も選択肢になります。
- ブリッジ・・両隣の歯を支えにして人工歯を被せる方法です。インプラントを用いずに失われた歯を補うことが可能です。
- 入れ歯・・部分入れ歯や総入れ歯が現実的な選択となることもあります。
5. 予防とメンテナンスでリスクを軽減する
インプラントがダメになるリスクを最小限にするためには、予防が重要です。適切な口腔ケアや生活習慣の改善、定期健診を継続し、インプラントの健康を保ちましょう。
- 定期的な健診・・インプラント周囲の異常を早期に発見するため、定期健診を欠かさず受けることが大切です。
- 口腔内ケアの徹底・・毎日の歯磨きと、歯科での専門的なクリーニングを併用し、インプラントを健康に保ちましょう。
インプラントがダメになった際も、適切な対処と治療で再度の治療が可能なケースが多くあります。
まとめ
インプラントの寿命は、適切なケアと生活習慣の維持によって大きく左右されます。毎日の丁寧な歯磨きや補助的なケア、定期的な健診は、長持ちさせるための重要な要素です。また、喫煙や食生活、ストレス管理といった生活習慣の見直しも、インプラントの健康に大きな影響を与えます。
さらに、専門的なクリーニングや噛み合わせの調整も、寿命を延ばすために欠かせません。インプラントは高額な治療で、健康のための大切な投資です。正しい方法でケアを続けることで、より快適で長く使えることが期待できます。