眠っている間に歯をギリギリと擦り合わせるのが歯ぎしりです。無意識で行うため、ご本人は歯ぎしりをしていることに気づかず、ご家族から指摘されて知る場合が多いです。歯ぎしりは不快な音をたてるだけでなく、歯や顎にも悪影響を与えますので、その影響を緩和するためにも早めに歯科医院にご相談ください。
しかし、実は歯ぎしりの原因は医学的には明らかになっていません。そのため歯ぎしりをしないようにするための治療というのは存在しないのですが、改善するための方法はいくつかありますので、ご紹介します。
目次
ストレスを解消させて歯ぎしりの症状を改善しよう
歯ぎしりの直接的な原因はわかっていないものの、一番の原因と考えられているのがストレスです。ストレスをなるべく発散させて軽減するようにしないと、無意識のうちに歯ぎしりを繰り返してしまいます。
生活の中でのストレス解消法は様々ありますので、ご紹介します。
1. 早寝早起きして規則正しい生活を
毎日の生活習慣を整えることで、良くない生活習慣を少しずつ改善しましょう。朝起きて太陽の光を浴びることで、体内時計がリセットできます。
体内時計はどなたにもあり、その中でも24時間周期のものをサーカディアンリズム(概日リズム)と呼んでいます。サーカディアンリズムは朝日に当たることでリセットされ、体内時計がずれてしまっても日光によって補正されます。
太陽の光を浴びてセロトニンというホルモンを体内で作っておくと、セロトニンは睡眠ホルモンであるメラトニンの原料になりますので、快眠に繋がります。また、セロトニンには幸福感を感じ、情緒を安定させる作用があります。
2. 適度な運動や散歩をしよう
身体を適度に動かすことがストレス解消につながります。現代人は身体をあまり動かさず、頭ばかり使う傾向があります。夜になると脳が疲れているのに身体が疲れていないため、なかなか寝付かれなかったり、夜中に何度も目がさめたりするのです。
昼間に適度な運動を行って身体を疲労させておくと、夜にぐっすり眠ることが出来るようになります。まずは散歩から始めてみましょう。
3. 必要なたんぱく質、ビタミン、ミネラルを摂取しよう
ストレスに曝されて脳が興奮すると、たんぱく質、ビタミン、ミネラルが消費されて体内から不足してしまいます。そのため、日頃からお食事の中でたんぱく質、ビタミン、ミネラルなどをしっかりと摂取して、ストレスに強い身体を作りましょう。
4. 良く寝れるように寝室を整えよう
ストレス解消のためには良く眠ることも大事で、快眠は健康の基本です。寝室のカーテンの色や枕の高さ、寝具やパジャマが快適であるかどうかにもこだわり、ぐっすり眠れるようにしましょう。
夜遅くまでスマホの画面を見ているということがないよう、就寝時間の少し前にはスマホの画面を見ないようにしましょう。
歯ぎしりの原因と考えられているもの
歯ぎしりが発生する原因については正確にはわかっていません。歯ぎしりは原因不明とされていますが、歯ぎしりを引き起こすとみられる原因はいくつかあります。
1. ストレス
歯ぎしりの原因としてもっとも多いと考えられているのがストレスです。睡眠中や起きている間も、無意識のうちに歯ぎしりや噛みしめ、食いしばりをすることによってストレス解消を行っていると思われます。
ストレスの大きさや感じ方は人によって様々ですので、ストレスを発散して解消するための様々な方法はあるものの、ストレスの原因となっているものを取り去らない限り、根本的な改善は期待出来ません。
2. 歯の噛み合わせが悪い
奥歯の高さが1本だけ高い場合など、噛み合わせが悪いと歯ぎしりが起こることが考えられます。歯に詰め物や被せ物をしたタイミングで歯ぎしりをするようになった場合は、歯科医院で噛み合わせのチェックをして、詰め物や被せ物の高さを調整すれば、歯ぎしりが治るかもしれません。
3. スポーツ
スポーツをしている時は、歯を食いしばることで瞬間的な身体の力をアップすることが出来ます。そのため、無意識のうちに歯をぎゅっと食いしばっていることが考えられます。瞬間的なものですので、無意識のうちに食いしばりが起こっており、習慣的に繰り返されるために癖となって、夜寝ている間にも歯に強い力がかかって歯ぎしりが起こっている可能性があります。
リラックスを心がけることによって改善する場合もありますが、癖になってしまっている場合は簡単には治りません。
4. 子供の歯ぎしり
小さな子供にも歯ぎしりは起こります。乳歯から永久歯に生え変わる時期の子どもの場合は、歯茎の中で歯が動いて出てこようとする際の不快感によって歯ぎしりが起こると言われます。
この場合は歯が生え変わってしばらくすれば歯ぎしりは自然になくなります。歯が生え変わっても歯ぎしりが続いている場合は、別の理由によるものと考えられます。
5. 睡眠時無呼吸症候群
睡眠時無呼吸症候群は眠っている間に呼吸が止まってしまう病気で、呼吸が止まっている時に歯ぎしりをしています。そのため睡眠時無呼吸症候群の治療をまず行い、改善すると歯ぎしりも止まる可能性が高いです。
歯ぎしり・噛みしめ・食いしばりの歯への悪影響
- 歯がすり減る
- 詰め物・被せ物が外れる、割れる
- 顎関節症のリスク
- 歯が弱るため歯周病の進行スピードがあがる
- 歯並びが悪くなる
- 頭痛や肩こりが起こる
歯ぎしり・噛みしめ・食いしばりをそのまま放置してしまうと、歯や顎に強く力がかかって大きな負担がかかり、ダメージを与えることになります。歯に深刻なダメージがあらわれる前に歯医者を受診しましょう。
歯ぎしりをしているとわかった時にはまず歯科を受診しましょう
家族からの指摘などでご自分が歯ぎしりをしているとわかったら、歯がすり減る等のダメージを受けている可能性があるため、まず歯医者を受診しましょう。
歯がすり減ったり欠けたりしていないか
歯ぎしり、食いしばり、噛みしめによって強い力がかかるため、歯がすり減ったり割れたり欠けたりしている場合があります。治療が必要な歯はすぐに治療しましょう。
知覚過敏が起こっていないか
虫歯ではないのに歯が痛む、しみるといった症状がある場合は、知覚過敏が疑われます。歯ぎしりによって歯がすり減ってしまい、歯の表面のエナメル質がごく薄くなってしまっている場合に、知覚過敏が起こります。
知覚過敏の治療は、歯に薬を塗ったり、痛み止めを服用したりします。市販されている知覚過敏用の歯磨き剤で歯を磨くことも効果が期待できます。
どうしても治らない場合は、神経を取る治療が検討されます。
噛み合わせは大丈夫か
詰め物・被せ物の治療をした後に歯ぎしりが起こるようになった場合は、詰め物・被せ物の高さが合っていない可能性があります。少しでも違和感がある場合は、噛み合わせの調整を行います。
ナイトガードで睡眠中の歯を保護する
歯ぎしりのために歯がダメージを受けているとわかったら、筋肉の緊張による上下の歯の噛みしめや食いしばりから歯を守るためのナイトガードと呼ばれるマウスピースの使用を提案される場合があります。ナイトガードはプラスチック製のマウスピースで、歯ぎしり、食いしばり、噛みしめによる強い力から歯を守り、すり減りや割れ、ひびを予防するためのクッションの役割をします。
しかしナイトガードはあくまでも歯ぎしりから歯を保護するために寝る前に装着するもので、歯ぎしりそのものをしなくなるわけではありません。
歯ぎしりを治す方法に関するQ&A
歯ぎしりの具体的な原因は正確にはわかっていませんが、ストレスや歯の噛み合わせの問題、スポーツ中の緊張などが歯ぎしりを引き起こす可能性があります。
ストレスが歯ぎしりの主な原因とされる理由は、無意識のうちに歯ぎしりや噛みしめ、食いしばりをすることでストレス解消を行っていると考えられるからです。
ストレスを解消するための方法としては、規則正しい生活リズムを作ること、適度な運動や散歩をすること、必要な栄養素を摂取すること、寝室の環境を整えることなどが挙げられます。また、個人に合ったストレス解消法を見つけることも重要です。
まとめ
歯ぎしりの原因は不明ですので、直接的に歯ぎしりを治す治療方法はないのですが、対症療法として、症状を改善させるために効果があるとされている方法についてご説明しました。歯ぎしりをしていることがわかったら、まずは歯科医院で歯や顎へのダメージを検査し、必要な治療をお受け下さい。その後、マウスピースをつけるなどの改善策をご提案します。歯ぎしり、食いしばり、噛みしめは簡単には治らないかもしませんが、出来るだけ歯や顎を守りながら改善させていく対策を行っていきましょう。