インプラント治療をするにあたって、高齢の方はさまざまなリスクがありますので、ご説明します。
目次
インプラントは高齢でも出来る? 年齢制限は?
当院では15歳以上(骨の成長が止まっていることが条件となります)で健康な方の場合、インプラントが可能です。何歳から可能ということに関しては、歯科医院によって多少事情が違うことがあります。
では何歳まで可能かというと、歯茎や骨の状態が健康であれば高齢の方でもインプラントが可能で、年齢制限はありません。
ただしインプラント治療後は定期的にメンテナンスに通っていただく必要がありますので、通院可能なお身体の状態であるということが望ましいです。
高齢者のインプラント治療における様々なリスク
高齢の方がインプラント治療を受ける場合、いくつかのリスクがありますのでご説明します。
高齢の方はインプラントをするにあたって一般的に以下のようなリスクがあります。
- 免疫力が下がって細菌感染を起こしやすくなる
- インプラントが骨と結合しにくくなる
- 持病があるとインプラントが出来ないケースがある
一つひとつご説明していきます。
1.免疫力が下がって細菌感染を起こしやすくなる
インプラントは外科手術が必要です。手術の際には局所麻酔をして、歯茎を切り開いて顎の骨にネジのような形をしたインプラント体(人工歯根)を埋め込みます。
年齢が上がるとどうしても免疫力が衰え、傷の治りも遅くなりますので、手術した部位が細菌感染するリスクが高まります。
2.インプラントが骨と結合しにくくなる
免疫力が下がって傷の治りが遅くなると、インプラントと骨が結合するスピードが遅くなり、最悪の場合は十分に結合せず、インプラントが固定されないということも起こります。
インプラントと骨がしっかり結合しない場合は上部構造(被せ物)を取り付けることが出来ません。
3.持病があるとインプラントが出来ないケースがある
骨粗鬆症、高血圧症、心臓病、糖尿病などの持病のある方は、インプラント治療を受けることが出来ません。
骨粗鬆症
骨粗しょう症は骨密度や骨量の減少が起こる疾患です。骨粗しょう症の治療薬として良く使われるビスフォスフォネート系薬剤は、骨の代謝を止めてしまいますので、インプラントを埋入した骨の部分が治癒しにくくなるリスクがあります。
高血圧症
高血圧症で降圧剤を処方されている方は、手術の緊張や不安によって血圧が急激に上がるリスクがあり、めまいや動悸を起こす場合があります。
心臓病
心臓疾患のある方は、血液をサラサラにするための薬を内服されている場合は、インプラント手術中に血が止まりにくくなることがあります。そのため内科の主治医と連携しながらインプラント手術が可能かどうかを協議する必要があり、その結果手術が可能になる場合もあります。
糖尿病
糖尿病の方は、細菌に対しての抵抗力が弱いため、傷口が感染しやすく、傷が治りにくいというリスクがあります。また、糖尿病と歯周病に関連があるといわれており、インプラント治療後に歯周病にかかってしまうとインプラントが長もちしません。
そのため内科の主治医と連携しながらインプラント手術が可能かどうかを協議する必要があり、その結果手術が可能になる場合もあります。
手術が可能になっても、傷がふさがりにくい、血が止まりにくいということが起こり得ますので、インプラント手術には注意が必要です。
骨が足りない場合の増骨処置について
歯を失ってから何年もの歳月が流れる間に、顎骨が痩せてしまってインプラントを埋入するには骨量が足りない場合があります。その場合にはインプラント手術の前に骨を造る処置をしなければなりません。
増骨の処置には、骨を移植する骨移植、人工の膜を使って骨を再生するGBR(骨再生誘導)法などがあり、患者さんに合った方法で行われます。
骨移植は、①自分の骨を移植する自家骨移植、②人工の骨補填材を利用する方法、③他人の骨を利用する他家骨移植、④牛などの動物の骨を利用する異種骨移植などがあります。
インプラント治療後に寝たきりになった時はどうしたらいい?
インプラントは治療後のメンテナンスを必ず受けていただかないと、長もちさせることが出来ません。しかし高齢の方の場合、インプラント治療から数年後に病気で寝たきりになる可能性もあります。
その場合、お口のケアが十分に出来なくなってしまい、虫歯や歯周病のリスクが高まります。特に歯周病はインプラント周囲炎を起こし、周囲炎が進行するとインプラントがグラグラになって抜けてしまいますので注意が必要です。
高齢者がインプラント治療を受ける場合は、ご自身で歯磨きなどのセルフケアが出来なくなったときに、インプラント周囲炎によってインプラントを失う可能性があることも理解しておきましょう。
インプラントでしっかり噛めることのメリット
インプラントは入れ歯やブリッジと比べると天然歯と同じくらいによく噛めることが特徴です。
アルツハイマー型認知症の原因と考えられているアミロイドβは、一定量が脳に蓄積すると脳神経細胞を破壊してしまいます。最近の研究によると、アミロイドβは噛むことが少ないと増えるということが報告されていますので、良く噛むと認知症になりにくいといえます。
更に、噛むことで脳が活発に働いて、反射神経や記憶力・認識力・判断力・集中力などが高まることも報告されています。
高齢者のインプラントに関するQ&A
インプラント治療は、骨粗鬆症、高血圧症、心臓病、糖尿病などの持病の方によっては適していない場合があります。これらの持病は治療中の合併症や手術時のリスクを増加させる可能性があるため、内科の主治医との連携が重要です。主治医の診断と評価を基に、インプラント治療の適性を判断することが必要です。
一般的には、15歳以上(骨の成長が完了している)で健康な方がインプラント治療を受けることができます。年齢制限に関しては歯科医院によって異なることがありますが、基本的には年齢よりも歯茎や骨の状態が治療に適しているかどうかが重要です。年齢制限は特に設けられていませんが、通院やメンテナンスの継続が可能な状態であることが望ましいです。
インプラント治療をした方が高齢になり寝たきりになった場合、お口のケアが困難になる可能性があります。口腔内の清潔さを保つために、定期的な口腔洗浄や抗菌洗口液の使用が重要です。また、虫歯や歯周病のリスクを低減するために、定期的な歯科検診やクリーニングの受診が必要です。特に歯周病はインプラント周囲炎の原因となる可能性があるため、早期発見と適切な治療が重要です。
まとめ
高齢になるにつれ歯を失う方が多くなります。しっかり噛みたい方は歯を失った時にインプラントを選択されるケースが増えており、インプラントが入れ歯やブリッジよりもよく噛めるのは事実です。
噛むことは健康の基本となりますので、ぜひインプラントで何でも噛んで食べられる歯を手に入れていただきたいと思います。しかし高齢者はインプラント治療によるリスクもありますので、慎重に判断することが重要です。