子供の口呼吸は出っ歯になりやすいと言われています。今日は子供が口呼吸になる理由や、口呼吸だとなぜ出っ歯になりやすいのかまでご説明します。
口呼吸を治さないと出っ歯になる理由は?
口呼吸を治さないと、なぜ歯並びが悪くなるのでしょうか。
- 口呼吸ではお口をポカンと開けている状態になる
- お口の周りにある筋肉が弱まり舌の位置も上顎の正常な位置ではない後方の部分になる
- 舌の圧力と唇からの力や頬の粘膜で歯並びを正常に保っているのにバランスが崩れる
- 頬の力がより歯並びにかかるようになる
- 出っ歯(上顎前突)・口が閉じられない(開咬)・歯が前後にデコボコする(叢生)・受け口(反対咬合)などの不正咬合と呼ばれる歯並びになる
また、長い時間お口を開けている状態が続くので、顎の長さが下へ成長してしまい、お顔立ちにも変化を生じさせる問題があります。
子供が口呼吸が原因で起こるトラブルとは?
鼻で呼吸を行う鼻呼吸は、空気が鼻を通ることでフィルター効果があり、風邪などのウイルスを体内に取り込まないよう減らすことが出来ます。一方、口で呼吸をすると空気が直接気管支から肺に入ります。そのため、ウイルスが体内に入りやすくなり、感染症にかかりやすくなります。
口呼吸を続けていると、他にも以下のようなトラブルが起こります。
- 口内が乾燥するため口臭が強くなる
- 舌の位置が下がるため、睡眠時に気道がふさがり、いびきをかいたり、睡眠時無呼吸症候群になる可能性がある
- 口が開いたままの状態のため、唇や口腔内が乾燥し、自浄作用や初期むし歯を再石灰化する唾液の作用が減る
子供が口呼吸になる原因は?
子供が口呼吸になる原因は以下のようなものが考えられます。
- お口を閉じる力・お口周りの筋力が通常よりも低下している
- アレルギー性鼻炎・鼻風邪などの影響で鼻で呼吸をすることが難しい
- アデノイド肥大になっている
- 頬杖をつく癖・噛みづらいために同じ部分で噛む癖・舌で前歯を押す癖が日常の習慣になっている
これらの原因から、ポカンとお口を開けて呼吸を行ういわゆるポカン口になっている子どもが多いと考えられます。
子供の口呼吸を治す方法
子供の口呼吸は、お口の周りの筋肉をトレーニングすれば改善することが可能です。ただ、先天的に歯並びが出っ歯などではないかということを確認するためにも、一度歯科医院へ通院し、歯科医師の診断を受けましょう。カウンセリングや精密検査のうえで歯並びが良くないと診断されれば、矯正装置による治療をおすすめします。
一般的に、治療の方針や費用のご説明の際に、矯正器具(固定式・可撤式・顎外固定)の種類の中から子供に合った装置をドクターが提示し、治療計画を説明します。主にプレート・急速拡大装置・インビザラインファースト(マウスピースによる矯正)などが挙げられます。それらの装置で歯を正しい位置に動かしつつ、舌や口輪筋を鍛えるMFTというトレーニングを行うという方法で機能の改善を目指します。
お口のトレーニングや体操については必要なものですが、やりなさいという言葉だけでは、子供は嫌になってしまうケースがあります。周囲にいる大人が楽しい気分で子供にさせるという工夫も重要です。お子さんと一緒にやってみるというのも効果があるので、大人も一緒にやると良いでしょう。
- あいうべ体操
- 舌回し体操
- 甘くないガムを噛む
これらの体操以外にも、シャボン玉や吹き戻しで、お口の周りの筋力を使用する遊びをするのも、楽しいプチトレーニングになります。
子供の口呼吸と出っ歯の関係に関するQ&A
口呼吸ではお口をポカンと開けている状態になり、口の周りにある筋肉が弱まり舌の位置も上顎の正常な位置ではない後方の部分になります。そのため、舌の圧力と唇からの力や頬の粘膜の力のバランスが崩れて、出っ歯(上顎前突)・口が閉じられない(開咬)・歯が前後にデコボコする(叢生)・受け口(反対咬合)などの不正咬合と呼ばれる歯並びになる可能性があります。
子供の口呼吸を改善するためには、以下の方法があります。
1.歯科医院での診断と治療: 先天的な歯並びの問題や口呼吸の原因を確認し、必要に応じて矯正治療を行います。
2.矯正装置による治療: 矯正器具を使用して歯並びを整える治療を行います。プレート、急速拡大装置、インビザラインファーストなどが一般的な装置です。
3.口の筋肉のトレーニング: お口の周りの筋肉を鍛えるトレーニングや体操を行います。あいうべ体操や舌回し体操などが効果的です。
4.大人のサポート: 子供が楽しく取り組めるよう、大人が一緒になってトレーニングを行うことや、楽しい遊びを通じて口の筋肉を使う環境を提供します。
長時間口が開いたままの状態が続くことにより、顎の成長方向が下方へ向かう傾向があります。これによって、顎の長さが下へ成長してしまい、顔の形やバランスに変化が生じる可能性があります。
まとめ
子供の口呼吸や歯が気になる、虫歯や歯周病を予防する対策などお口や歯に関するお悩みがあれば、クリニックでドクターやスタッフに相談しましょう。子供の矯正は、抜歯をせずに顎の成長をコントロールしつつ矯正できるのが最大のメリットです。きれいな歯並びは歯ブラシでの歯磨きもしやすいので、結果としてむし歯を防ぎやすくなります。痛みや変色などの症状を引き起こしてから歯科へ通院するのではなく、定期的にフッ素塗布や検診を受診し、歯や歯肉を健康な状態で予防するという視点で医院へ通いましょう。
子供の口呼吸が出っ歯(不正咬合)になる可能性についての研究があります。一部の観察研究の系統的レビューでは、子供の口呼吸が歯列不正咬合、特に咬合機能に影響を及ぼす可能性があることが示されています。このレビューでは、口呼吸をする子供における不正咬合の有病率が高いことが明らかにされており、特にAngleのクラスII、ディビジョン1の不正咬合の有病率が、クラスIの不正咬合よりも高い傾向にあることが多くの研究で報告されています。【Wanderson S Fraga et al., 2018】
別の研究では、口呼吸が顎顔面領域の発達に大きな影響を与え、咬合および筋トーヌスに障害を引き起こす可能性があることが指摘されています。この研究の目的は、口呼吸が不正咬合の病因、病態、および咀嚼における障害との関連性を評価することでした。口呼吸の習慣は主に7歳から12歳の子供に影響を与え、口呼吸と顎顔面領域の発達および咬合との間に関連が確立されています。不正咬合には遠心咬合、前歯の開咬、オーバージェットの増加、側方の交差咬合、前歯の混雑、および平均的な切歯傾斜の障害が含まれます。これらの臨床状態は、口呼吸が持続すると、後期混合歯列期および永久歯列期にさらに複雑になります。【Z. Valcheva et al., 2018】
これらの研究結果から、子供の口呼吸が不正咬合、特に出っ歯になるリスクを高める可能性があることが示唆されます。しかし、口呼吸と不正咬合の関係は複雑であり、個々のケースに応じて異なる可能性があります。そのため、口呼吸の習慣を持つ子供は、不正咬合のリスクを評価し、必要に応じて早期介入を行うために、専門家による評価を受けることが推奨されます。