マウスピース矯正では透明なマウスピースを一定期間ごとに付け替えて歯を動かして行きますが、マウスピースの違和感になかなか慣れない方もおられます。マウスピースの違和感はどうして起こるのか、違和感を感じなくなるための対処などについてご説明します。
マウスピース矯正で感じやすい違和感の種類とその理由
矯正治療でマウスピースを歯に付けた時に、どんな違和感を感じやすいのでしょうか? 違和感の種類と原因は以下のようなものです。
- 締め付け感
- 歯茎がむずむずする
- しゃべりづらい
- 吐き気がする
1. 締め付け感
矯正用のマウスピースは、マウスピースの通りに歯を動かすためのものですので、現在の歯並びよりも少し歯が動いた形になっています。
現在の歯並びとマウスピースにはズレがあり、それを無理にはめることで歯を動かす力が歯全体にかかります。特に新しいマウスピースに交換した際には、歯とマウスピースのズレが大きいため、歯が締め付けられるような感じがする方が多いです。
殆どの方が締め付けられるような違和感には2日程度で慣れてしまい、その後は気にならなくなります。
2. 歯茎がむずむずする
マウスピースを付けていて歯茎がむずむずするのは、歯が動いている証拠です。歯が動く時は、動く方向の歯槽骨が吸収され、逆方向の骨が再生されます。その時に歯周組織にも影響があり、むずむずする感じに繋がります。
歯茎がむずむずする感じは2~3日程度で気にならなくなる方が多いです。
3. 喋りにくい
マウスピース型矯正装置を装着すると喋りにくいと感じる方がおられます。マウスピースが歯全体を覆っているために、舌の動かし方やちょっとした頬の筋肉の使い方などに違和感が出るためと思われます。
また、唾がたまってしまい、喋りにくく感じることもありますが、数日で慣れる方が殆どです。
4. 吐き気がする
矯正用のマウスピースは全ての歯を覆うため、奥歯付近への刺激で嘔吐反射が起こりやすくなる方がおられます。
これには個人差が大きいのですが、異物を本能的に吐き出そうとする生理的な反応で起こります。また、緊張や恐怖心によって嘔吐反射が起こることもあります。
矯正用のマウスピースは嘔吐反射が起きにくいようにごく薄い素材で出来ており、最初は嘔吐反射が出ても、慣れてしまう方も多いです。
それでも吐き気がする方は、一時的にマウスピースの奥歯の部分だけをカットして矯正治療を続ける場合もあります。
嘔吐反射が強く、マウスピースを装着出来ない方は、早めに担当医にご連絡ください。
マウスピース矯正はどんなタイミングで違和感が出る?
マウスピース矯正で違和感が出やすいタイミングは下記の4つです。
- 初めてマウスピースを装着した
- 新しいマウスピースに交換した
- 長時間マウスピースを外していた
- 歯にアタッチメントを付けた
1. 初めてマウスピースを装着した
マウスピース矯正を始めて、1枚目のマウスピースを歯に付けた時には、マウスピースによって歯が圧迫されて痛みや違和感を感じることが多いです。
これは現在の歯とマウスピースの形が一致していないからです。マウスピース矯正ではマウスピース1枚につき、0.25mm程度歯を動かしますので、、新しいマウスピースは現在の歯から0.25mm動いた状態ということが出来ます。
対処法は?
歯がマウスピースの形にピッタリ合うように動いていくに従って、違和感はなくなっていきます。2~3日程度で違和感をあまり感じなくなる方が多いです。どうしても違和感が耐え難い場合は、担当医からマウスピースの装着時間を減らすように指示する場合もあります。
2. 新しいマウスピースに交換した
新しいマウスピースに交換してすぐは、締め付け感などの違和感が出やすい時です。新しいマウスピースの形は、現在の状態から少し歯が動いた形になっています。そのため、初めてマウスピースを装着した時と同様に、現在の歯とマウスピースの形のズレによる違和感が出ます。
対処法は?
歯が動いていくに従って違和感はなくなっていきますので、そのまま装着し続けましょう。マウスピースの交換食後でどうしても辛い場合は、担当医が1つ前のマウスピースの装着を少し延長するように指示を出す場合もあります。
3. 長時間マウスピースを外していた
マウスピース矯正インビザラインでは、1日に22時間以上の装着が必要です。装着時間が短くなると、歯が予定通りに動きませんし、外している時間が長いと、歯列が後戻りを起こしてしまう場合もあります。
その場合、マウスピースを装着した時には今まで以上に違和感を強く感じますし、最悪の場合はマウスピースがはまらないということにもなりかねません。そのため、なるべく装着時間は守るようにしましょう。
対処方法は?
長期間マウスピースを外していて、違和感や痛みが強い場合は、担当医に連絡しましょう。中断期間が長期にわたった場合は、以前使っていたマウスピースが歯にはまらない場合もあり、マウスピースを作り直すことになります。
4.歯にアタッチメントを付けた
インビザラインでは歯にアタッチメントと呼ばれるレジンの小さな突起を付けます。アタッチメントは、マウスピースと歯をしっかりとフィットさせ、アタッチメントの形や位置によって歯にかかる矯正力が変わります。
アタッチメントを歯につけるタイミングでは、使用するマウスピースもアタッチメントが付いた形になっています。そのためマウスピース内が今までよりも窮屈に感じたり、締め付け感が強くなって違和感を感じることがあります。
対処方法は?
アタッチメントによる違和感には、1枚目のマウスピースを付けた時と同じように、マウスピースを付け続けて慣れるしかありません。軽い痛みのような違和感がある時は、一時的に痛み止めを飲むという方法もありますが、痛み止めを服用すると歯の動きが悪くなります。
マウスピース矯正で違和感が出る原因と対処方法に関するQ&A
マウスピース矯正では、歯を理想の位置に動かすために、現在の歯並びよりも少し歯が動いた形のマウスピースを使用します。このズレが歯に締め付ける力を生み出し、違和感の原因になります。特に新しいマウスピースに交換した際、この感覚が強まることがありますが、大抵の人は数日で慣れます。
歯茎がむずむずするのは、歯が動いている証拠です。歯が動く際、動く方向の歯槽骨が吸収され、逆方向の骨が再生します。この過程で歯周組織に影響が出て、むずむずする感覚が生じます。この違和感も通常2~3日で気にならなくなります。
マウスピースを装着すると、歯全体を覆うため舌の動かし方や頬の筋肉の使い方に違和感が出ます。また、唾液のたまりやすさも喋りにくさを引き起こす原因になりますが、ほとんどの人は数日で慣れ、話すことが容易になります。
まとめ
マウスピース矯正における違和感は、主に実際の歯並びとマウスピースの微妙なズレによるものです。特に新しいマウスピースへの切り替え時や初めての装着時に、歯にかかる力が違和感や痛みの主な原因となります。
歯茎のむずむず感や話しにくさ、まれに嘔吐反射を引き起こすこともありますが、これらは通常数日で慣れることが多いです。違和感が続く場合は、早めに担当医に連絡しましょう。
マウスピース矯正における違和感に関して、以下の論文を参考に説明します。
1. White et al. (2017) の研究では、アライナーと従来の固定装置を使用した患者間での不快感のレベルを比較しました。固定装置を使用した患者は、アライナーを使用した患者よりも大きな不快感を報告し、より多くの鎮痛剤を使用しました。この研究は、アライナーを使用することで、初期の治療段階において従来の固定装置よりも不快感が低減されることを示唆しています。【White et al., 2017】
2. Diddige et al. (2020) の研究では、3種類の異なる矯正装置(MBT従来の装置、自己結合装置、クリアアライナー)を使用する患者の痛みのレベルを比較しました。クリアアライナーを使用した患者は、従来の固定装置や自己結合装置を使用した患者よりも痛みが少なかったと報告されています。この研究は、クリアアライナーが初期の治療段階で他の装置よりも快適であることを示唆しています。【Diddige et al., 2020】
これらの研究から、マウスピース矯正において違和感が出る主な原因は、初期の治療段階での圧力の変化や装置の適応によるものであると考えられます。クリアアライナーを使用した場合、従来の固定装置に比べて不快感が少ないことが報告されています。