高齢者は虫歯になりやすい口腔内環境になりますので、注意しなければならない点がいくつかあります。高齢の方が虫歯になりやすい理由や高齢者の虫歯予防についてご説明します。
高齢者の虫歯予防で気をつけることとは?
高齢者のお口の中は、老化による口腔内環境の変化のために虫歯になりやすい状態になりがちです。その中には気をつけていてもどうにもできないものもありますが、日常生活で少し気をつけるだけで改善できる要素もありますので、ご説明します。
フッ素入りの歯磨き剤を使いましょう
歯の根面の表面は薄いセメント質に覆われていますが、セメント質はエナメル質と違ってすぐに破壊されてしまいます。セメント質の内部の象牙質は酸に弱く、虫歯が早いスピードで進行してしまいます。
象牙質の虫歯を予防するには、フッ素入りの歯磨き剤を使うのがおすすめです。フッ素入りの洗口剤も併用すると更に効果が期待できます。
フッ素の3つの働き
1.エナメル質の修復を促進する
虫歯菌の出す酸によって歯から溶け出したカルシウムやリンなどのミネラルを補うことを促進します。これを再石灰化といいます。
2.歯の質を強化する
歯の表面を覆うエナメル質を酸に溶けにくい性質に変えて歯質を強化し、虫歯になりにくくします。
3.虫歯菌の働きを弱める
虫歯は虫歯菌と呼ばれる細菌に感染して起こります。フッ素は虫歯菌の働きを弱めて虫歯菌が酸を作り出すのを抑えます。
唾液の分泌を増やしましょう
高齢者は唾液の分泌が減ってきますので、意識して唾液を増やして口腔内を清潔に保ち、虫歯になりにくくすることが大切です。
唾液を出すには、良く噛んで食べる、ガムを噛む、舌を動かすという方法があります。もう一つ、唾液腺を軽くマッサージすることでも唾液の分泌がうながされます。
唾液腺のマッサージの仕方
お顔の上から唾液腺(耳下腺・顎下腺・耳下腺)の近くを力を入れずに指で軽く圧迫するようにマッサージを行いましょう。
唾液腺マッサージをお食事前に行うことで、唾液の分泌が促進され、食後の消化を助けると共に、唾液の洗浄作用でお口の中が洗われてきれいになります。
歯医者の定期健診(クリーニング)を受けましょう
虫歯や歯周病予防のために、定期健診で歯のチェックや検査を受けましょう。定期健診の際には歯のクリーニングも行いますので、ご自宅での歯磨きでは落とせなかった歯垢や歯石をきれいに除去できます。
虫歯も歯周病も早期発見出来れば治療も簡単に出来ますので、年に数回の定期健診をおすすめします。
高齢者は虫歯になりやすいのはどうして?
高齢者特有の虫歯になりやすいポイントがあります。
老化によるエナメル質の減少
歯の表面はエナメル質というとても硬い組織に覆われています。歯のエナメル質は人体の中で一番硬い組織であることからも、どれくらい硬いのか想像に難くないと思います。
このエナメル質は、平均2ミリ~3ミリ程度の厚さしかありません。しかし歯を様々な刺激から保護してくれ、極端に高い温度や低い温度が歯にしみないようにしてくれたり、硬いものが直接喉に入らないように、物理的にも守ってくれています。
しかしエナメル質は細胞によって作られているのではなく、ミネラルの集合体です。そのためエナメル質が一度失われて薄くなると、虫歯になりやすくなります。
高齢になると、歯ぎしりや食いしばりの癖があってエナメル質がすり減っていたり、酸によってお口の中に溶け出したミネラルを再度取り込んで歯を修復する再石灰化が間に合わず、エナメル質が溶けてしまったりして、エナメル質が減った状態になっていることが多いのです。
歯周病によって歯肉が退縮して象牙質が露出する
高齢者は歯周病にかかっている割合が高く、歯周病がある程度進行すると、歯茎が退縮して減ってきますので、今まで歯肉に埋まっていた歯の根の部分が少しずつ露出してきます。
歯周病によって歯が長くなったように感じる方は、歯肉が退縮を起こしており、歯の根面が歯茎の上に露出している状態になっています。
歯の象牙質はエナメル質と比べると柔らかいため、虫歯菌の出す酸によって溶かされるのもエナメル質より早くなります。そのため、いったん虫歯になると進行が早く、歯の更に奥へと深い虫歯が出来てしまう危険性があります。
唾液が少なくなる傾向がある
高齢の方は唾液が減少して、お口の中が乾き気味になる傾向があります。唾液には身体を守るための様々な作用があって、虫歯菌や歯周病菌などの細菌やウイルスからお口や喉を守っています。
唾液が少なくなるとお口の中を唾液が洗浄しきれずに食べカスなどの汚れが残りやすくなり、歯垢や歯石となって虫歯のリスクが高まります。
唾液の働き
- 消化作用・・食べ物を消化する
- 湿潤・保護作用・・お口の粘膜に傷が出来ないように守る
- 洗浄作用・・歯についた食べかすなどを洗い流す
- 殺菌・抗菌作用・・細菌が入ってくるのを防ぐ
- 緩衝作用・・お口の中が酸性に傾かないよう中和する
- 再石灰化作用・・酸によって歯から溶け出したカルシウムやリン酸を再度取り込んでむし歯を防ぐ
- 排出作用・・異物などがお口に入ってきた時に排除しやすくする
高齢者が虫歯を防ぐために気をつけることに関するQ&A
高齢者は、歯のエナメル質が減少し、歯茎が退縮する傾向があるために虫歯になりやすくなります。また、唾液の分泌量が減少することも虫歯のリスクを高めます。
唾液は口腔内を洗浄し、細菌や食べかすを除去する役割があります。高齢者は唾液の分泌が減少し、お口の中が乾燥しやすくなります。唾液の不足により食べカスが残りやすくなり、虫歯のリスクが高まります。
唾液の分泌を増やすためには、よく噛んで食べる、ガムを噛む、舌を動かすなどの方法があります。また、唾液腺のマッサージも効果的です。耳下腺や顎下腺の近くを指で軽く圧迫することで唾液の分泌が促進されます。
まとめ
虫歯が出来やすい場所は、歯の噛む面の他、歯と歯の間、歯と歯茎の間などで、主に歯垢の溜まりやすいところです。特に高齢の方は歯肉の退縮が起こって虫歯になりやすくなっていますので注意が必要です。
高齢者は虫歯になると進行が早いので、フッ素入り歯磨き剤の使用や、唾液腺マッサージ、歯科医院の定期健診などで虫歯から歯を守りましょう。